「節税について」

投稿者: Aegies 投稿日:

みんなの会計事務所は、保険、創業融資・資金調達、相続、税務調査、社会保険、不動産、経理など各分野のスペシャリストが在籍し、税金に留まらない経営に関する様々なお悩みをワンストップでサポートできる総合事務所です。今回、代表の松本佳之氏に「節税」をテーマにお話を伺いました。

税制改正の特例など、常に最新の情報を把握しておく

――経営者が節税を行う際に、最初に考えるべき方法やポイントは何でしょうか?

松本佳之氏(以下松本):いわゆる節税には、主にふたつのパターンがあります。ひとつは、税法上の特例などを活用して納めるべき税金を減らすという方法です。法律を根拠に直接税金が減るメリットが得られますが、適用を受けるためには一定の要件を満たしていなければなりません。その点、中小企業で適用できるものはそれほど多くないというのが実際のところです。

 ふたつめは経費などを使って、会社の利益を圧縮して税金を減らす方法です。一般的に最も多く活用されている方法で、利益が減ったぶん税金が減ることになります。ただ、節税できるからといって経費を無駄遣いしては意味がありませんから、従業員の福利厚生に役立つようなものや、将来の収益を生み出すためのものとして使う必要があります。

――ひとつめの、税法の枠組み内での節税にはどのような手法がありますか?

松本:たとえば、最近は最低賃金の引き上げなど賃金相場が上昇傾向にあります。会社が従業員の給与水準を高めた場合には「賃上げ促進税制」というものが使えます。給与の増加幅に応じて一定の税額が控除できるもので、多くの会社で利用されるようになりました。ほかにも、設備投資に計画的に取り組めば特別償却や税額控除が可能な「中小企業経営強化税制」なども近年活用が進んでいます。

――最近の税制改正について、経営者が留意すべき点はどのようなことでしょうか?

松本:税制改正によって新たに特例が設けられたりすることはよくあります。こうした特例は知っていないと使えませんから、常に最新の情報を把握しておくことが必要でしょう。また、そのほかの一般的な節税策にしても、税法上のルールがあります。交際費にしても、固定資産を買ったときの費用計上にしてもルールがあるわけです。それらを知っていなければうまく節税をすることはできません。

 ただ、こうした税制改正の中身を経営者の方が常にキャッチアップしていくのはなかなか難しいものです。それだけに顧問税理士に経営者からどんどん質問をしていくなど、相談しやすい状況をつくっておくことが大切かと思います。まずは代表ご自身に税制に対して興味をもっていただき、専門家をうまく活用してほしいですね。

経費を使えば会社のお金も減っていくことを意識すべき

――ふたつめに挙げていただいた、経費によって利益を圧縮する方法で効果的なものは何がありますか?

松本:まず留意すべきなのは、経費を使うことで税金は減るものの、一方で会社の資金も流出するということです。つまり経費を使えば会社のお金も減っていくことを意識しなければなりません。その意味で有効な方法のひとつが、共済制度への加入です。代表的なものに「倒産防止共済」がありますが、掛金を経費にしながら、同時に資金として留保することができます。取引先の倒産に関するリスクヘッジにもなり、効果的な節税手法のひとつといえます。

 そのほかにも、役員の自宅を会社名義にすることで、社宅として家賃の一部を経費にすることもできます。また出張の際には手当を計上するなど、日々の細かい部分に目配りして見直しをかけていくことも大切といえるでしょう。

――こうした節税を行う際に、大事にすべきポイントについて教えてください。

松本:説明したように、節税というのは基本的に資金の流出を伴うものです。決算書上の損益は悪くなってしまうわけで、過度な節税を行った結果、資金が足りなくなったり、決算書上の利益が減って金融機関からの融資を受けられなくなれば何の意味もありません。何よりも、会社にとって有益な節税を行っていく必要があります。

 つまり節税に関する意義や目的をしっかりと把握した上で、税金を減らすだけでなく、利益をつくって内部留保に力を入れることとのバランスが大事。節税に傾斜し過ぎて利益を過度に圧縮してしまったら、成長へとつなげる投資ができなくなってしまいます。それでは本末転倒です。

 自社にとっての節税目的を明確にして十分に理解し、効果的な節税に努めるとともに、内部留保を確保して成長への土台を築く。このバランスを重視していくことが重要だと思います。

会計数値は“健康診断”の際の診断結果と同等なもの

――そうした点を経営者が把握し意識していくためには、日頃からどのような点に留意していく必要があるでしょうか?

松本:会社の中長期のイメージや計画をしっかりもつことです。会社を今後どう伸ばしていきたいのか。長いスパンでの成長プランを立てた上で、それに基づく節税対策を考えることですね。繰り返しますが、成長フェーズでは内部留保の確保や金融機関からの融資は欠かせませんから、総合的な視点で節税を捉えることが大切でしょう。そして、会計数値を日頃から意識して上手に使うことも大事な要素です。

――会計数値を意識するとはどういったことですか?

松本:会計数値は私たちが健康診断に行ったときの診断結果の値のようなものなので、経営者が自社の経営状態を把握していくための重要な指標です。会計数値の把握と分析を税理士任せにしてしまっている方も多いのですが、経営者が知るべき大事な要素を表しているものですから、それをしっかりと認識して欲しいと思います。

節税とともに、利益をつくって内部留保を増やすことを目指す

――あらためて、節税を上手に成功させるために必要な考え方を教えてください。

松本:ひとつの方法で簡単に多額の節税ができる方法はありません。税法は税金を納めるためのルールですから、簡単に税金を減らせるようなうまい話はなかなかないのです。ですから多様な節税方法を知っておくことが必要ですし、日頃からの細かな手法の積み重ねが効果的な節税につながることをまずは知ってほしいですね。そのためにも、やはり顧問税理士に日常的に相談できるような環境をつくっておくことが大事かと思います。

――そして内部留保をつくるための節税であり、企業としての成長を目指す上での節税であるべき…ということでしょうか?

松本:そうですね。中小企業の場合、仮に1,000万円の利益があるとしたら税金は30%弱ですから、普通は700万以上の利益は手元に残るはずなんですね。それが内部留保になっていくわけですが、無理な節税によってせっかくの700万円が手元に残らない形になってしまうのでは本末転倒でしょう。弊社としても、経営者の方々が内部留保をどう捉え、今後の成長に向けてどう活用すべきかといったアドバイスもできれば良いと考えています。

――最後に経営者の方へのメッセージをお願いします。

松本:節税を考えていくなかで、月次などの会計数値が分かっていなければご自身でどう判断すべきか分からない、その結果、税理士に言われるまま…の状態になってしまいがちです。すべてを細かく理解する必要はありませんが、経営者の方々は自社の月次会計状況がどうなっているのか、大まかにでも興味をもってもらうことが大事でしょう。節税を切り口に会社の現状を把握して、ぜひ今後の企業成長へとつなげてほしいと思います。

*プロフィール

みんなの会計事務所 主宰・代表・公認会計士・税理士

みんなの会計ビジネスサポート株式会社 代表取締役 松本佳之

関西学院大学商学部を卒業後、朝日監査法人大阪事務所に入所。2005年公認会計士登録(近畿会所属)、2007年に税理士登録(近畿税理士会所属)。2010年に行政書士登録(大阪府行政書士会所属)。税理士資格取得に伴い独立し、みんなの会計事務所(大阪市北区)を設立。以後、監査法人で株式上場支援業務を担当した経験を活かし、大阪を中心に全国の成長企業の経営をサポートし続け、2021年には経理アウトソーシング、経理人材の育成・紹介事業を行うみんなの会計ビジネスサポート株式会社を設立している。

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