【経営にもAIを活用する時代】なぜ計画と実績はずれてしまうのか?

現代のビジネス環境は、かつてないスピードで変化しています。このような状況下で、計画と実績の乖離は、多くの企業が直面する課題の一つです。本記事では、計画と実績がずれてしまう背景を探り、その解決策としてAIの活用がどのように役立つのかを考察します。

計画と実績の乖離が発生する理由

1. 不確実性の増大

ビジネス環境の変化は予測が難しく、経済、政治、技術、社会のいずれの分野でも突発的な事象が発生します。たとえば、パンデミックや地政学的リスクなど、従来の予測モデルでは対応しきれない事象が計画と実績の差を生み出します。

2. 人的要因

計画の立案や実行には人間が深く関与しています。しかし、意思決定にはバイアスが入り込みやすく、主観的な判断が予測の精度を下げる場合があります。また、計画の実行段階でのコミュニケーション不足や部門間の連携ミスも、乖離の一因となります。

3. データの不備

計画を立てる際に使用するデータが古い、不完全、あるいは信頼性に欠ける場合、正確な予測が困難になります。また、データ量が膨大になるにつれ、それを分析して有用な情報を引き出すプロセスも複雑化します。

4. 外部要因の影響

競合の動き、顧客ニーズの変化、新しい規制の導入など、企業の外部環境が変化すると、計画通りに進まなくなることがあります。

AIの可能性

計画と実績の乖離を最小限に抑えるために、AIは以下のような点で大きな可能性を秘めています。

1. データ分析の高度化

AIは、大量のデータを迅速かつ正確に処理できます。たとえば、過去のトレンドデータを分析し、将来の需要を予測する機械学習モデルを構築することで、より正確な計画を立てることが可能です。

2. リアルタイムのモニタリングとアラート

AIは、リアルタイムでデータを監視し、異常値やトレンドの変化を迅速に検出します。これにより、計画の実行段階で問題が発生した場合に早期対応が可能になります。

3. 意思決定の最適化

AIは、複数のシナリオをシミュレーションして、それぞれの結果を比較することで、最適な意思決定をサポートします。これにより、人的バイアスを排除し、より合理的な判断ができるようになります。

4. パーソナライズされた提案

顧客の購買行動やニーズをAIが分析し、それに基づいて最適な商品やサービスを提案することが可能です。これにより、需要変動に柔軟に対応でき、計画と実績の差を縮小します。

AI導入の実例

1. 需要予測

ある大手小売業では、AIを活用して商品の需要予測を行っています。過去の販売データ、季節要因、天候データなどを組み合わせることで、商品の需要を正確に予測し、在庫の適正化を実現しました。この結果、在庫不足や過剰在庫のリスクを大幅に低減できました。

2. サプライチェーンの最適化

製造業では、AIを用いてサプライチェーンを最適化する事例が増えています。物流データや生産データをリアルタイムで分析し、供給の遅延や需要の急変に迅速に対応する仕組みを構築しています。

3. マーケティングの効率化

AIを利用して顧客データを分析し、セグメントごとに効果的なマーケティング施策を立案する企業も増えています。このような取り組みにより、広告の費用対効果が向上し、売上計画の精度が高まっています。

AI導入の課題

AIの導入には多くの利点がある一方で、以下のような課題も存在します。

1. データの品質

AIの性能はデータの品質に依存します。不正確なデータやバイアスのあるデータを使用すると、AIの予測も誤る可能性があります。

2. コスト

AIシステムの導入や運用には高い初期コストがかかることがあります。特に、中小企業にとっては負担が大きい場合があります。

3. 社内の文化

AIの活用には、従業員の理解と協力が不可欠です。新しい技術に対する抵抗感やスキル不足が、導入の障害となることがあります。

4. プライバシーと倫理

AIが大量のデータを扱う際には、個人情報の保護や倫理的な問題に注意する必要があります。これらの課題に対処しなければ、信頼を失うリスクがあります。

AIを活用した未来の経営

AIを効果的に活用することで、計画と実績の乖離を最小限に抑えることが可能です。以下はそのための具体的なステップです。

  1. データインフラの整備: データの収集、管理、分析が容易に行えるインフラを構築します。
  2. 専門知識の確保: データサイエンティストやAIエンジニアを育成または採用します。
  3. 小規模導入から開始: 小さなプロジェクトでAIを試験的に導入し、効果を検証します。
  4. 継続的な改善: AIモデルやデータの品質を継続的に見直し、改善します。
  5. 社内文化の醸成: AIの価値を理解し、活用を推進する社内文化を育てます。

結論

計画と実績の乖離は、現代のビジネスにおいて避けられない課題ですが、AIを活用することでその影響を大幅に軽減することが可能です。AIは、データ分析の高度化、リアルタイムの対応力向上、意思決定の合理化を通じて、企業の競争力を向上させます。しかし、その導入には課題も伴うため、慎重な計画と実行が求められます。

AIを賢く活用し、計画と実績の差を縮めることで、企業はより持続可能で柔軟な経営を実現できるでしょう。

投稿者:Aegies 投稿日時:

「節税について」

みんなの会計事務所は、保険、創業融資・資金調達、相続、税務調査、社会保険、不動産、経理など各分野のスペシャリストが在籍し、税金に留まらない経営に関する様々なお悩みをワンストップでサポートできる総合事務所です。今回、代表の松本佳之氏に「節税」をテーマにお話を伺いました。

税制改正の特例など、常に最新の情報を把握しておく

――経営者が節税を行う際に、最初に考えるべき方法やポイントは何でしょうか?

松本佳之氏(以下松本):いわゆる節税には、主にふたつのパターンがあります。ひとつは、税法上の特例などを活用して納めるべき税金を減らすという方法です。法律を根拠に直接税金が減るメリットが得られますが、適用を受けるためには一定の要件を満たしていなければなりません。その点、中小企業で適用できるものはそれほど多くないというのが実際のところです。

 ふたつめは経費などを使って、会社の利益を圧縮して税金を減らす方法です。一般的に最も多く活用されている方法で、利益が減ったぶん税金が減ることになります。ただ、節税できるからといって経費を無駄遣いしては意味がありませんから、従業員の福利厚生に役立つようなものや、将来の収益を生み出すためのものとして使う必要があります。

――ひとつめの、税法の枠組み内での節税にはどのような手法がありますか?

松本:たとえば、最近は最低賃金の引き上げなど賃金相場が上昇傾向にあります。会社が従業員の給与水準を高めた場合には「賃上げ促進税制」というものが使えます。給与の増加幅に応じて一定の税額が控除できるもので、多くの会社で利用されるようになりました。ほかにも、設備投資に計画的に取り組めば特別償却や税額控除が可能な「中小企業経営強化税制」なども近年活用が進んでいます。

――最近の税制改正について、経営者が留意すべき点はどのようなことでしょうか?

松本:税制改正によって新たに特例が設けられたりすることはよくあります。こうした特例は知っていないと使えませんから、常に最新の情報を把握しておくことが必要でしょう。また、そのほかの一般的な節税策にしても、税法上のルールがあります。交際費にしても、固定資産を買ったときの費用計上にしてもルールがあるわけです。それらを知っていなければうまく節税をすることはできません。

 ただ、こうした税制改正の中身を経営者の方が常にキャッチアップしていくのはなかなか難しいものです。それだけに顧問税理士に経営者からどんどん質問をしていくなど、相談しやすい状況をつくっておくことが大切かと思います。まずは代表ご自身に税制に対して興味をもっていただき、専門家をうまく活用してほしいですね。

経費を使えば会社のお金も減っていくことを意識すべき

――ふたつめに挙げていただいた、経費によって利益を圧縮する方法で効果的なものは何がありますか?

松本:まず留意すべきなのは、経費を使うことで税金は減るものの、一方で会社の資金も流出するということです。つまり経費を使えば会社のお金も減っていくことを意識しなければなりません。その意味で有効な方法のひとつが、共済制度への加入です。代表的なものに「倒産防止共済」がありますが、掛金を経費にしながら、同時に資金として留保することができます。取引先の倒産に関するリスクヘッジにもなり、効果的な節税手法のひとつといえます。

 そのほかにも、役員の自宅を会社名義にすることで、社宅として家賃の一部を経費にすることもできます。また出張の際には手当を計上するなど、日々の細かい部分に目配りして見直しをかけていくことも大切といえるでしょう。

――こうした節税を行う際に、大事にすべきポイントについて教えてください。

松本:説明したように、節税というのは基本的に資金の流出を伴うものです。決算書上の損益は悪くなってしまうわけで、過度な節税を行った結果、資金が足りなくなったり、決算書上の利益が減って金融機関からの融資を受けられなくなれば何の意味もありません。何よりも、会社にとって有益な節税を行っていく必要があります。

 つまり節税に関する意義や目的をしっかりと把握した上で、税金を減らすだけでなく、利益をつくって内部留保に力を入れることとのバランスが大事。節税に傾斜し過ぎて利益を過度に圧縮してしまったら、成長へとつなげる投資ができなくなってしまいます。それでは本末転倒です。

 自社にとっての節税目的を明確にして十分に理解し、効果的な節税に努めるとともに、内部留保を確保して成長への土台を築く。このバランスを重視していくことが重要だと思います。

会計数値は“健康診断”の際の診断結果と同等なもの

――そうした点を経営者が把握し意識していくためには、日頃からどのような点に留意していく必要があるでしょうか?

松本:会社の中長期のイメージや計画をしっかりもつことです。会社を今後どう伸ばしていきたいのか。長いスパンでの成長プランを立てた上で、それに基づく節税対策を考えることですね。繰り返しますが、成長フェーズでは内部留保の確保や金融機関からの融資は欠かせませんから、総合的な視点で節税を捉えることが大切でしょう。そして、会計数値を日頃から意識して上手に使うことも大事な要素です。

――会計数値を意識するとはどういったことですか?

松本:会計数値は私たちが健康診断に行ったときの診断結果の値のようなものなので、経営者が自社の経営状態を把握していくための重要な指標です。会計数値の把握と分析を税理士任せにしてしまっている方も多いのですが、経営者が知るべき大事な要素を表しているものですから、それをしっかりと認識して欲しいと思います。

節税とともに、利益をつくって内部留保を増やすことを目指す

――あらためて、節税を上手に成功させるために必要な考え方を教えてください。

松本:ひとつの方法で簡単に多額の節税ができる方法はありません。税法は税金を納めるためのルールですから、簡単に税金を減らせるようなうまい話はなかなかないのです。ですから多様な節税方法を知っておくことが必要ですし、日頃からの細かな手法の積み重ねが効果的な節税につながることをまずは知ってほしいですね。そのためにも、やはり顧問税理士に日常的に相談できるような環境をつくっておくことが大事かと思います。

――そして内部留保をつくるための節税であり、企業としての成長を目指す上での節税であるべき…ということでしょうか?

松本:そうですね。中小企業の場合、仮に1,000万円の利益があるとしたら税金は30%弱ですから、普通は700万以上の利益は手元に残るはずなんですね。それが内部留保になっていくわけですが、無理な節税によってせっかくの700万円が手元に残らない形になってしまうのでは本末転倒でしょう。弊社としても、経営者の方々が内部留保をどう捉え、今後の成長に向けてどう活用すべきかといったアドバイスもできれば良いと考えています。

――最後に経営者の方へのメッセージをお願いします。

松本:節税を考えていくなかで、月次などの会計数値が分かっていなければご自身でどう判断すべきか分からない、その結果、税理士に言われるまま…の状態になってしまいがちです。すべてを細かく理解する必要はありませんが、経営者の方々は自社の月次会計状況がどうなっているのか、大まかにでも興味をもってもらうことが大事でしょう。節税を切り口に会社の現状を把握して、ぜひ今後の企業成長へとつなげてほしいと思います。

*プロフィール

みんなの会計事務所 主宰・代表・公認会計士・税理士

みんなの会計ビジネスサポート株式会社 代表取締役 松本佳之

関西学院大学商学部を卒業後、朝日監査法人大阪事務所に入所。2005年公認会計士登録(近畿会所属)、2007年に税理士登録(近畿税理士会所属)。2010年に行政書士登録(大阪府行政書士会所属)。税理士資格取得に伴い独立し、みんなの会計事務所(大阪市北区)を設立。以後、監査法人で株式上場支援業務を担当した経験を活かし、大阪を中心に全国の成長企業の経営をサポートし続け、2021年には経理アウトソーシング、経理人材の育成・紹介事業を行うみんなの会計ビジネスサポート株式会社を設立している。

投稿者:Aegies 投稿日時:

「成長企業の資金繰りについて」

企業経営の土台として欠かせない「資金繰り」。とりわけスタートアップ企業や中小企業の経営者にとっては、最重要課題のひとつといっても過言ではありません。そこで今回お話を伺ったのは、スタートアップ北浜税理士事務所の吉川さん。事務所名が示す通り、起業支援のエキスパートです。資金調達、毎月の適切な資金繰り、さらには投資や節税の考え方について、わかりやすく解説いただきました。

スタートアップ企業にも無理なくできる、資金調達術

――スタートアップ企業・成長企業は資金調達に苦労する場合が多いと言われます。資金調達を行う上で考慮すべき主なポイントは何でしょうか?

吉川広崇氏(以下吉川):資金調達を行う上で重要となるのは、法人の場合は資本金、個人事業主の場合は自己資金の金額です。具体的にいえば、通帳に多くの現金が入っているほど、金融機関からの信用が高くなります。融資時に提出する事業計画も大事ですが、それ以上に「キャッシュを貯める力」そのものが経営者としての実績として見なされるわけです。仮に1,000万円の融資を受けるとして、50万円の貯金もできなかった人よりも、1,000万円の貯金ができた人が信用されるのは当然といえるでしょう。ちなみに、親族から借りるなどして貯金を増やしてもすぐ見破られてしまいます。

 開業前に、会社勤めなどをしながら資産をつくるのは難しいと思いますが、なるべく堅実に預金を増やし、直近数年の良好な推移を金融機関に示せるようにしましょう。現金以外では、信頼度・換金性が高い投資信託なども資金として高く評価されます。

――資金を調達する際に、優先すべき資金調達の方法や選択肢はありますか?

吉川:まだ信用の低いスタートアップ企業が融資を受ける際、いきなり都市銀行に相談してもなかなか応じてもらえません。そこで私がお勧めするのは、日本政策金融公庫です。これは中小企業・小規模事業者などを支援するための公的な機関であり、民間金融機関よりも手厚く起業家をサポートしてくれます。私も開業時に融資を受けました。他の金融機関とも併用できるので、信用金庫や信用組合などと同時に相談してみるのも良いでしょう。企業のステージが上がり、さらに多額な資金調達が必要になったら、地方銀行、都市銀行との取引も検討してください。

――調達した資金はどのように投資するのが良いのでしょうか。

吉川:金融機関から融資を受けたお金は、あくまで会社の運転資金のためのもの。基本的に、生命保険などを含む金融投資には使えないのでご注意ください。スタートアップ企業の場合、会社の運転資金に経営者の自己資金を投入するケースもありますが、融資を受けることで自己資金を使わずに済むようになるでしょう。この資金を金融投資に回せばよいのです。

キャッシュフロー管理の鉄則は「通帳残高を見ること」

――スタートアップ企業・成長企業が資金繰りの管理を行う上で、最も気を付けるべきことや、押さえておくべき手法を教えてください。

吉川:スタートアップ企業には経理専門の社員がおらず、経営者自身がキャッシュフローを管理するケースが少なくありません。そこで、基本的な資金繰り管理の手法としてお勧めしたいのが、「通帳の残高をこまめに見る」ということ。特に毎月末の残高の推移は、売上・支出と併せて必ず確認してください。月末の残高が増えていれば問題ありませんが、横ばいになっていたら黄信号。なぜなら毎月の支出とは別に、法人税、預かっている消費税、社員の税金・社会保険料など、年に1~2度まとめて支払わなくてはならない支出があるからです。

 したがって、毎月の残高は、最低でもこれらの支出を見越して増やしていかねばなりません。その他、業種によって仕入れのタイミングや金額が異なるため、それも考慮する必要があります。もちろん、人材や仕入れへの投資のため、一時的に残高が減少する時期もあるでしょう。預金の推移をしっかり把握しつつ、経営の攻めと守りのバランスを考えるのが大切です。

――予算策定やキャッシュフロー分析などに有効なツールや手法はありますか?

吉川:スタートアップ企業の場合、予算策定やキャッシュフロー分析のための特別なツールがなくても問題ありません。収支の記録はExcelなどの簡単なソフトがあれば十分です。また、会社を立ち上げたばかりの時期は予算策定が難しいものですが、融資を受ける際に作成した事業計画書の予算をベースにすればまず問題ないでしょう。2期目以降になれば、前期と比較しながら毎月の予算を作り、各部門の適切な支出額を模索していきます。高度な分析ツールは、本格的な成長フェーズに入ってから導入しても遅くありません。

節税よりも、成長に向けた貯蓄と投資が事業成功の秘訣

――スタートアップ企業・成長企業が適切な税務戦略を立てる際に考慮すべきポイントは何ですか?

吉川:まず押さえておきたいポイントは、決算が黒字の場合、事業年度の開始日から半年後に法人税の中間納付があるということです。最低でも、中間申告分と確定申告分の法人税が支払えるよう、資金を残しておきましょう。一方、成長に向けて投資を強化しているフェーズでは、決算が赤字となる場合もあります。赤字決算のときは法人税が発生しないため、納税のための貯蓄を考える必要がありません。「攻め」の時期と「守り」の時期とで、税務戦略を切り替えるわけです。

 また、黒字決算の場合でも、貯蓄を事業投資に回すことで法人税を抑えることが可能です。たとえば決算賞与を出すことで、従業員に利益を還元するのもそのひとつ。従業員の勤労意欲を高めるのに役立つというメリットもあります。

――税務において効果的な、金融資金の運用方法について教えてください。

吉川:金融投資で利益が出たときの税率は、個人よりも法人の方が高いため、個人の資金で投資をしたほうが有利です。個人の資金が不足している場合には、法人の資金で金融投資をすることもできますが、先ほど話した通り、金融機関から融資を受けた資金は投資に回さないよう気を付けましょう。融資を受けたことで生じた余剰分の法人資金で金融投資を行うのは問題ありません。

――効果的な節税のアプローチ手法を教えてください。

吉川:同じ経費でも、決算月に使った場合は年度内の経費として、翌月に使った場合には翌年度の経費として計算されます。そのため、決算月内に使った方が年度内の法人税を抑えるのに有利といえます。とはいえ、健全な成長を望むなら、あまり節税を重視するのも考えものでしょう。なぜなら節税のほとんどは結局「お金が減ること」だから。たとえば決算の前に慌てて新車を購入するといった奇妙な「節税」をする経営者がいますが、自動車は6年ほどかけて減価償却するため、ほとんど節税効果はありません。無駄なお金を使うよりキャッシュを貯めるほうが経営は安定しますし、しっかり納税している企業は金融機関からの評価も高いのです。実際、私のお客様を見ていても、節税にこだわることなく事業の成長を目指す経営者の方が成功しているようです。

――最後に、資金繰りに悩む起業家や経営者に、一言アドバイスをお願いします。

吉川:経理の専門知識がなくても、通帳の残高を毎月チェックするだけで資金繰りはかなり安定します。面倒でも、ぜひやってみてください。私自身、独立して間もない頃は資金繰りが心配でしたし、今もベンチャー経営者として奮闘しています。ぜひ、一緒に経営をがんばりましょう。

*プロフィール

スタートアップ北浜税理士事務所
代表 吉川 広崇
資産税に特化した税理士法人、税理士・弁護士・司法書士等との合同事務所、創業支援に特化した税理士法人の3社で幅広い経験を積んだのち、2019年1月に独立してスタートアップ北浜税理士事務所を開業。プレイングマネージャーとして多数のクライアントをサポートしている。スタートアップ企業の創業支援実績は特に豊富で、自らの起業経験を活かした実践的なアドバイスは評価が高い。

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「会計業務のDX化」について

経営を合理化する上で避けて通れない、「会計業務のDX化」。クラウドソフトの導入やペーパーレス化などを実現したいと考えつつも、どこから手を付けて良いかわからず悩んでいる経営者も少なくないでしょう。そこで今回お話を伺ったのは、税理士法人マスエージェントの田口さん。業種を問わず、数多くのスタートアップ企業・中小企業をサポートし、会計のDX化を成功させた実績の持ち主です。会計業務を安くDX化する上で知っておくべきことや、ツール選定のコツなどについて解説いただきました。

クラウド会計ソフト、領収書スキャンソフトなどで会計業務を合理化

――田口様はこれまで幅広い業種・規模の企業を対象として、税理士としてサポートを行われてきました。経営者の方々は、会計業務に対してどのような悩みを抱えていることが多いのでしょうか。

田口敦氏(以下田口):会計業務は会社にとってお金を生まない仕事です。そのため経営者は、なるべくお金と時間をかけずに済ませたいと考えています。ところが、紙の書類を用いた従来の会計業務では、非常に手間がかかる上にミスも生じやすい。たとえば、領収書や請求書を管理するのはかなり手間がかかる作業ですし、これらの書類を見ながら会計ソフトにデータを手入力すると、ミスが発生しやすくなってしまいます。

 ところが、私たちが主に担当しているスタートアップ企業や中小企業の多くには、会計業務のDX化についてはノウハウや知識がありません。「ペーパーレス化やクラウドソフトの導入などに興味はあるが、どうすればいいのかわからない」とお困りの経営者は多いですね。

――会計業務をDX化することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

田口:たとえば、紙の領収書や請求書を扱う手間を省くため、スキャンしてデータ化するという手段があります。私たちの場合は『STREAMED』というサービスを使っています。これは、領収書・レシート・通帳などをスキャンするだけで自動的に仕訳データ化してくれる優れもの。マスエージェント大阪支社ではスキャン専門のスタッフもおり、お客様から送られた領収書・請求書を素早くデータ化するサービスを行っています。1年分の資料をまとめて処理する場合でも、試算表をスピーディに作成できるようになりました。

 クラウド会計ソフトも、DX化には必須です。パソコンにインストールする従来の会計ソフトでは、会計情報を手入力する手間がかかり、ミスも起こりやすくなります。一方、当社も導入している『マネーフォワード』などのクラウド会計ソフトでは、ネットバンキングの口座情報やクレジットカードの情報とシームレスに連携でき、自動的に収支を入力してくれます。省力化と精度の向上を同時に実現できるわけです。

専門知識のない中小・零細企業でも、会計業務のDX化は絶対にできる

――会計業務をDX化するにあたって、最初に実施すべきことは何でしょうか。

田口:基本的な回答になりますが、まずは実際にクラウド会計ソフトを導入し、使ってみるしかないと思います。ただし、ソフトを導入するにあたっては、慎重に選定する必要があるでしょう。信頼できる税理士事務所や、すでにDX化している企業経営者に相談するのもお勧めです。もちろん、我々マスエージェントにご相談いただければ、これまでの豊富な経験を活かし、ゼロから会計業務のDX化を支援いたします。

――貴社では、クライアント企業の会計業務DX化をどのように支援しているのですか?

田口:当社は2006年頃から会計業務の合理化に取り組んでいましたが、2016年頃からクラウド会計をはじめとする本格的なDX化を推進し始めました。2018年にはお客様とのコミュニケーションを効率化するため『チャットワーク』を導入。2020年にはGoogleサービスも取り入れています。

 私たちは、DX化に意欲のない経営者に対して、無理にDX化を勧めることはありません。ただし、「会計業務をDX化したい」とご相談いただいたお客様には、全力で導入・運用をサポートしますし、まず確実にDX化は成功します。もちろん、はじめのうちはソフトの操作や新しい業務フローに慣れるため少し時間がかかりますが、1年も経てばマスターできます。「DX化のおかげで会計業務の時間が激減し、ストレスも減った」と皆さんおっしゃいますね。

会計ツールを選ぶポイントは、会社の理念とサポート体制

――「会計業務のDX化をなるべく安く実現したい」という経営者に向けて、アドバイスをいただけますか。

田口:価格の安いクラウド会計ソフトなどを使えば、一時的にコストは抑えられるかもしれません。しかし、ソフトが操作しにくいと結局手間がかかりますし、ベンダーのサポートが不十分だとトラブルが起きたときに困ります。

 やはりDXに強い、信頼できる税理士に相談するのがいちばん確実だと思います。たとえば私たちが社内で使用している領収書・請求書スキャンシステム『STREAMED』は会計業務効率化に抜群の効果がありますが、料金は決して安くありません。しかし、私たちがコストを負担することで、お客様には安価にご利用いただくことができています。そのように税理士をうまく使うことが、安くDX化するコツといえるかもしれません。

――会計業務をDX化するツールを選ぶ上で、重視すべきポイントを教えてください。

田口:使いやすさや価格など、重要なポイントはいくつかありますが、私が最も重視しているのはツール開発会社の文化です。私たちは現在『マネーフォワード』と『STREAMED』を会計業務DX化のメインツールとして活用していますが、導入前に私はどちらの会社も訪問し、社長に会ってお話を伺いました。企業トップがサービスに対してどのような理念を持っているのか、本当に安心して使えるサービスなのかを知りたかったからです。

 新しいツールに未完成な部分があるのは当然で、重要なのはこれからどうやってより良くしていくかです。我々ユーザーの声を聞き取って開発してくれるのか、困ったとき相談に乗ってくれるスタッフがいるのか。私はそういうことを社長に尋ね、「この会社のツールなら長く使い続けられる」と確信した上でツールを導入しました。自社でツールを導入する際には、可能なら開発会社の社員と直接話してみるのが良いでしょう。それが無理なら、サポート体制が充実している会社を選ぶことをお勧めします。

――最後に、会計業務の合理化に興味を持つ経営者の方に向けて、メッセージをお願いします。

田口:一般的なITリテラシーさえあれば、会計業務のDX化は必ずできます。まずは一歩目を踏み出してください。できれば税理士や経営者仲間など、DX化の知識がある相談相手を見つけるのが良いと思います。

 それから、DXとは少し離れますが、会計・税務の知識を高めることも会計業務の合理化に役立ちます。税理士に依頼している作業が実は自社で簡単にできるケースや、会計ソフトの使い方次第で作業が楽になるケースが実は少なくないのです。そうした会計リテラシーを高めるための勉強会も、マスエージェント大阪支社では年間30回程度実施しています。もしご興味があれば、参加してみてください。

*プロフィール

税理士法人マスエージェント 大阪支社 代表 田口敦

2005年、マスエージェントに入社。2008年より現職。大阪支社の運営と同時に、税理士として顧客の経営サポートを行う。中小・スタートアップ企業に対するDX支援の実績多数。企業経営者に寄り添う適切な会計業務を行っており、「税務調査が少ない」と顧客からの評価が高い。大阪支社独自の勉強会「マスゼミ」を通じ、お客様への情報発信活動も積極的に展開している。

投稿者:Aegies 投稿日時: